【写真集レビュー】ビビアン・マイアー:ストリートフォトグラファー

ビビアンマイアーという写真家を知ったのは、たまたま目にしたユーチューブだった。この女性を「写真家」と言っていいのか分からない。そもそも写真家がどういう人たちなのかよく分からないところがある。

ビビアン・マイアーは積極的に写真を撮ってはいたが、作品としては一切公表していなかったので、もし彼女を写真家と呼ぶのなら謎に包まれた女性である。彼女の写真はアートのようであり、報道写真のようでもあり、ただ単にスナップ写真を撮っていただけのようにも思える。

自分で撮った写真を自分で鑑賞していただけだから、仕事として撮っていたわけではない。かと言って趣味として15万枚も撮るには少し理解に苦しむ。モノクロ写真のこの時代に現像と焼付けの費用を捻出するのはとても大変なことであったはずだ。

彼女は自分の作品?に対して誰かの評価を受けるなんて、なんの興味もなかったのだろう。結局彼女の写真は、死後まったく関係のない人の手に渡りネットに公開されることになった。もしかしたら誰にも知られることもなく、廃棄されてしまった可能性だってあった。

私たちは画像だけではなく、動画だってネットにつなげば世界中に配信できる時代に生きている。つねに何らかの意図を持って、そして良い評価を受けることを期待している。インスタグラムやツイッターにアップした写真に「いいね」がつけば誰だってうれしい。

デジタルの時代に生きている私たちと、モノクロの世界に生きていた彼女の時代を同じように語るには無理がある。しかしほんの少し前まで、個人的に撮った写真なんてアルバムに収めるくらいがやっとだった。彼女が特別でもなんでもなくて、誰にも知られることもない魅力的な写真家が私たちの周りには意外といたのかもしれない。

素晴らしい写真を撮りながら、賞賛されることもなく亡くなってしまったことは残念ではあるけれど、少なくとも撮りたい被写体を追いかけていた彼女は自由に生きていたと思う。